株式会社 室蘭市民斎場 雲上閣
代表取締役 藤井 茂信

ラ  フ  ー  ラ

仕事柄いつも為になるお話を聞かせて戴いておりますが、本日は尊敬するお寺様のお説教の話を
少しご紹介させて戴きます。

有望な大学四年生が卒業間近に迫ったある日、突然不慮の事故で亡くなられ、
誰もが悲嘆にくれながら蕩々と流れる読経を聞き、それぞれの思いを込めて焼香を終えた後のお説教でした。お導師はご遺族へ心からのお悔やみを述べた後、お釈迦さん(仏教を開かれたインドの方)の子供の話をされ始めました。

お釈迦様は生まれてきた我が子にラフーラと名付けました。
日本語に訳すると"災い〜わざわい"と言う意味であるそうです。
自分の子供に"わざわい"と名付ける親が居るでしょうか?
例えば 災男・災子 と言う名前になるのでしょうか
この意味合いは大変深い物が有り今日は全てをお話しできませんが、正に四つの苦しみ 「生・老・病・死」生まれてきたそのものが苦しみで有りそれらの苦からの解脱(自由)をお釈迦様は説かれました。
生まれてきた為に、ミルクが欲しいといって泣き、受験勉強にも苦しんでいる姿やあえいでいる姿を見て、どうしても助けてやれないと割り切っていても、手助けできない事切なく思う事自体が自分の事のように辛いことであり、ましてやこちらの○○さんのように若くして亡くなられると親(自分)と変わる事も出来ず何ともしてやれない事に苦しみが有るのです。
日本の言葉は「子煩悩」とある。「自分〜親」にとって「子」は最大の煩悩(災い)です。
立派に育てと願い、生存競争の世界で有れば他の子供より健康でたくましく、頭が良い子になって欲しく事故で有ればとにかく自分の子供の安全を一番先に頭に浮かべ、いつまでも子供の事が心配で心配で自分の心の安心が出来ないのです。
子供が生まれなければこの様な苦しみを味わうことがなく、自分の心の平安と心の解脱(自由)が得られないのです。

でもネ。お父さんお母さん考えてみて下さい、この世に大切な命が宿り生まれてきたからこそ誕生した時やお母さんと初めて呼んでくれた時の感動が有り、小学校へ入学した時も体に合わない大きなランドセルに目を細め、運動会では我が子に必死の声援を送ったのではないでしょうか?国立大学に入学した時の喜びは忘れられないと思います。
愛情があるがゆえに親(自分)にとって安心出来ない災いであり苦しみであるのです。
愛さなければ苦しみもないのでは無いでしょうか?
自分の事しか考えない人間は苦しみもないのです。
人はこの世に生を受けたならば必ず死が訪れます。○○さんは一般の平均寿命から見ると
確かに短い一生でありました、しかしながらお父さんお母さんそして廻りの方に○○さんの生きた証として何よりも多くの思い出と感動を与えてくれたのではないでしょうか。
子供を育てることは大変で有り苦しみも有ったでしょうが、
その何十倍も楽しかったのではないでしょうか?
人の命は儚(はかな)いからこそ尊いのです。
貴方が不老不死の命を授かったとしたら、減らないお金を授かったとしたら貴方はそれを大切にするでしょうか?
ご遺族はじめ本日ご参列の皆様、悲しみは悲しみとして深くとらえ、○○さんの短きながら精一杯生きてこられた命の証を大切にして差し上げようではありませんか。
日本人の宗教が空洞化されようとしている中、ご導師のお言葉に涙しながら閉式を
申し上げた私でありました。

ご意見、ご質問等は メールアドレス fujii@memorial-gr.com へお願いします。

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