市立室蘭総合病院  

 

胃癌と外科治療 
    
(その7:手術方法と進行度)

外科医:渋谷 均

 胃癌は胃の周囲のリンパ節に転移を起こします。これをリンパ行性転移と呼びます。
癌細胞が肝、肺、骨、脳などに転移をする事を血行性転移と呼びます。
術前の画像診断により血行性転移が有る場合は一定の大きさになれば診断が可能です。
血行性転移が有る場合は4期の癌で、予後は不良です。ここでは血行性転移のない患者さんの手術方法について述べていきます。
癌細胞は胃の周囲のリンパ節、さらに胃を養う太い血管に沿って転移を起こしていきます。ですから胃癌の手術では一般的には2群までのリンパ節を一緒に切除することが必要になってきます。解りやすく述べると卵を想像して下さい。卵の黄身が癌とすると白身は1群のリンパ節になります。殻の部分は2群のリンパ節になります。それより遠方に転移のある患者さんでは予後は極めて不良になります。リンパ節の番号(胃癌取り扱い規約)は癌がどの場所にできたか(胃上部、胃体部、胃下部)によって変わってきます。いずれにしろ2群までのリンパ節を切除することが基本です。転移を起こさないような粘膜内癌であればリンパ節の切除はいらないこともありますが、この点については話がいりくんでいますのでここでは一般的なことだけお話します。胃癌が下部、中部(体部)にできた場合は遠位胃切除術を行います。この場合は胃の半分から4/5切除がなされます。切除後の再建方法はビルロ-トのT、あるいはU法が行われます。T法、U法の選択は手術時の状況によります。T法のほうがより生理的ということができます。何故なら食べたもの、胆汁、膵液などが以前と同じようなル−トを通って流れるからです。U法は癌が胃下部にあり、十二指腸にかかりそうな場所にある場合に適応になります。一般的に術後の食事開始時期においてはU法のほうが食物がより通過しやすいというメリットはあります。胃癌が上部にある場合は胃全摘の適応になります。胃上部だけとる手術もありますが、逆流性食道炎を起こしやすく、私はこの手術は好きではありません。胃全摘後の再建方法はRoux-Y(ル-ワイ)法を好んで行います。最初は慣れないため患者さんは食がすすみませんが、次第に食事量も増え1カ月もすれば結構食べれるようになります。
余談ですが、胃の手術をした後の経過を外来で診ていきますと男性はなかなか肥れませんが女性は結構肥ってきます。女性が男性より長生きするという生命力の強さにはいつも感心させられます。次回は胃癌の化学療法、予後などについて述べます。

 

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