胃癌と外科治療
(その6:胃の解剖学的事項)
外科医:渋谷 均
今回は胃の解剖学的事項と胃癌の進行度などについ述べます。胃は大きく分けて3つの部分からなります。約80%の胃癌は胃の中〜下部に発生します。さらに小弯側がその好発部位です。一般的には胃癌の好発部位は胃下部、小弯側ということができます。
このことは前回述べた腸上皮化生と密接に関連します。即ち腸上皮仮生を伴う慢性胃炎が癌の発生母地となりやすく、この腸上皮仮生は年齢と供に胃下部から上部へと進行するからです。さて良く聞く言葉に早期癌、進行癌という言葉があります。胃癌取り扱い規約では癌の浸潤が粘膜下層までのものを早期胃癌といいます(下の図を参照)。癌は粘膜面にできてからさらにその下の層に浸潤していきます。癌が漿膜を越えてしまうと癌は腹腔内に飛び散り癌の播種が始まります。こうなっては手遅れです。早期癌の定義は癌の浸潤が粘膜下層まででリンパ節転移の有無は問わない、となっています。実際粘膜内の癌ではリンパ節転移は殆ど無いといえます。粘膜下層まで浸潤しますと18%位のリンパ節転移が起こります。しかしながら多くの早期胃癌ではそのリンパ節転移の拡がりは多くはなくおおむね手術で取り切れます。それ故その予後も良好です。癌が粘膜下層まで及ぶとその層ではリンパ管、血管が豊富にあることから転移が始まりやすいのです。
癌が筋層からさらに漿膜に及ぶようになるとリンパ節転移は40〜50%にも及びます。さらに胃周囲のリンパ節を越え遠方まで転移を起こすようになります。この状況下では手術で実際に癌がとりきれているかはミクロの世界になり、自信を持って癌は取り切れましたとは明言できません。癌のリンパ節転移が遠方(大動脈周囲)まで及ぶ場合、あるいは腹膜播種がある場合の胃癌患者さんの予後は極めて不良です。ですから40代になったら胃の検査(内視鏡がお勧め)を受け、早期に見つけてもらうのが一番です。粘膜内癌でしたら内視鏡的に切除が可能で苦痛も伴いません。検診などでよくバリウムの検査を受けたと聞きますが現在では先に内視鏡を受けるのがもっとも手っ取り早いと思います。大きな病院では予約になりますが、個人病院の先生なら朝食を摂らないで受診すればすぐ検査が受けられると思います。但し内視鏡の得意な先生、不得手の先生もいますので良く評判を聞いて受診して下さい。この欄でお勧めの先生を紹介しても宜しいのですが、ちょっと問題になってはいけませんので差し控えます。次回は手術方法などについて述べます。
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