いよいよ夏を迎え、レジャーシーズン到来ということで海や山にいく機会が多くなると思いますが、同時に思わぬ事故やケガに遭遇することも多くなります。こんな時に慌てずに素早く処置する方法をお話しします。
皮膚は私たちの体にばい菌が入っていくことを防ぐ役割があります。皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3つの層に分かれており、表皮はさらに、角質層、基底層などに分かれています。
皮膚の傷には、
1.切り傷(ナイフなど鋭いもので生じる傷)
2.擦り傷(落下や摩擦によってできる傷)
3.刺傷(釘や木の枝などが刺さる傷で奥深くまで達することが多く感染しやすい)
4.裂傷(皮膚がぎざぎざに裂ける傷)
5.挫傷(打撲による傷で多くは内出血を ともなっており、骨折があることもある)
などいろいろな種類がありますが、このようにいったん皮膚に傷ができると前述したばい菌が体のなか に入って来やすくなるために感染の危険が生じます。
出血には3種類あり損傷した血管の種類により分類されます。
1.動脈からの出血(真っ赤な血が心臓の拍動に合わせて噴き出すもの)
2.静脈からの出血(暗赤色の血が、ゆっくり流れるもの)
3.毛細血管からの出血(傷口から血がじわじわ出るもの。)
1.患部を直接圧迫する。
+ 傷口にハンカチ、タオル、滅菌ガーゼなど、きれいな布を当てる。
+ その上から、指や手のひらで、まっすぐ力をいれて圧迫する。
+ 出血が止まるまで(5〜15分)、圧迫を続ける。
+ 出血が止まったら、布の上から包帯、スカーフ、パンティストッキングなどを巻く。
2.間接圧迫法(傷口より心臓に近い止血点を圧迫する方法。)
3.止血帯をかける方法。
1.輪ゴムで縛らない。
2.傷口に味噌や炭などを塗らない。
3.止血中に傷口を見ない。
4.鼻血が出たとき、仰向けになって後頭部を叩かない。
まず怪我をしたときには、傷が深くない擦り傷や切り傷で、出血が軽度なときには消毒をして清潔なガーゼを当て、慌てないで病院に来てください。傷口に土やその他の汚いものが付着しているときには水道水で傷口を洗い(こすらなくてもよい)同じ様に消毒しましょう。消毒液は市販のスプレー式のもので十分です。それ以外の被膜をつくって傷口を充填してしまうタイプのものは、消毒が十分でない場合、脇から浸出液が出ることがありますから、病院にかかる前には使用しないことが望ましでしょう。アウトドアでは消毒の準備や水道水がありませんが、こんな時には川の水、水筒の水やミネラルウオーターなどを使います。ウーロン茶や麦茶でもいいです。また傷が深く長く出血が激しいときには傷よりも心臓側の手足を縛って止血するか、あるいは直接出血部位をガーゼなどで抑えて止血しながら来院して下さい。皮膚がそぎ落とされた状態の傷や傷口から黄色い脂肪や赤い筋肉が見えているような傷も同様です。
皆さん、事故やケガに注意して楽しい夏休みを過ごしてください。
−ご参考までに、病院での処置の方法をご紹介します−
皮膚の傷の治療で大事なことは、患者さんに恐怖心やの不安感を与えないことはもとより痛みの少ない治療も大切です。また、傷口にばい菌が入り化膿しないようにしなくてはいけませんし、傷口がきれいになるような治療が必要です。原則的には皮膚の傷の治療方法は4通りあるのでご紹介します。
a.縫合(ほうごう) :傷ついたところを糸で縫い合わせる。
b.ステイプラで固定 :傷ついたところをホチキスの針のようなもので固定します。
c.皮膚テープで固定 :傷ついたところを合わせてテープで固定します。
d.接着剤で固定 :傷ついたところを合わせて接着剤で固定します。
a.b.の方法は傷の大きな時や深い傷などのときに局所麻酔をして行います。術後は数回外来で消毒をして約7日後に抜糸あるいは抜針します。c,dの方法は割合小さな傷やきれいな傷のときの適応となり場所も顔とか普段目に触れやすい部分の傷のときに行います。傷の程度やその状況によって4つの方法を使い分けているため、この傷のときにはこの方法と決めらているわけではありません。これらの方法は擦り傷には適していません。傷の処置の後、場合によっては化膿止めである抗生物質を処方することもあります。
傷の治療をされている患者さんは次のことに注意してください。
1.傷の治療中は自己判断で薬を中止したり、通院をやめたりしないようにしましょう。
2.傷口に緊張をかけたり濡らしたり、直接さわったりしないようにしましょう。